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三塁を蹴る

140字以上書きます

校則の僅かな違反を見逃してやることで共犯関係になる先生と生徒(誰に対して?)

俺の通っていた中学校は公立だったのだけど、なんか気合い入れて作られたとこだったらしく、やたらと先進的だった。埋立地にマンションが並ぶ、新しい街だった。

制服もチャイムも校則も無かった。いまにして思えばかなり特殊な学校だった。

そして平和だった。たしか校内のどっかでガムの包み紙が大量に見つかって、それだけで学年集会が開かれたのを覚えている。当時はその潔癖さを気にもしなかったけど。

当然不良もいなかった。三年になってから不良(なんと髪を染め、タバコを吸っていたのだ!)がクラスに転校してきたのだけど、俺らの腑抜けぶりに呆れたのか、特にその不良ぶりを発揮することもなく普通に卒業した。

 

きっとあの中学校は成功したのだろう。高校への進学実績も、公立中学とは思えないものを叩きだしていた。

 

制服とチャイムと校則。実は俺は一年生から生徒会に入っていた。いまとなってはもう詳しくは思い出せないけど、委員会やら全校集会やらでなにか色々議論をしていた気がする。予算会議みたいなワードも出ていた気がするので、お金周りも含めてわりと裁量があったんじゃないだろうか。

 

しかし……制服もチャイムも校則もないのに、いったいこれ以上生徒会になにができるというのか?中学生たちにはそれ以上の自由を想像することができなかった。仕方ないので赤い羽根募金とか朝のあいさつ運動とか、当たり障りのないことをやっていた。

 

不自由は感じられず、解決すべき問題は無さそうだった。みんな楽しそうに過ごしていた。でもそれは楽しくなさそうにする理由が無かったからかもしれない。

あの時期にもっと鬱屈して、捻じ曲がって、対立してもよかったんじゃないかと思う時がある。というか普通そうなるだろ、と。歪まないことによって歪んでいたんじゃないか。

当時仲良くしていた女子に、最近会う機会があった。中学生のときの話を聞くと、そんなに楽しいわけでもなかった、良い子ぶって、なにかを我慢していた、といっていた。俺はそれを聞いて悲しかった。生徒会は無力だ。

 

そして俺が生徒会を引退し、くだらない受験勉強をはじめた頃に、一つ下の女子が自殺した。高い綺麗なマンションから飛び降りたみたいだった。俺は生徒会を引退していたし、受験勉強が忙しかったので、それどころじゃなかった。