三塁を蹴る

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廃墟が消えていく

あまりに季節感不安定なので眩しい日は全て夏と判断してしまうようになった。桜が散った後の季節をそれでも春と言い張る気概が無い。

18歳の頃、茗荷谷に廃墟があった。元々は中国人留学生向けの寮で、何年か前に火災で全焼してから、取り壊しを待つだけの極上の廃墟になったらしかった。

夏休みに当時入っていた演劇サークルの同期と先輩と数人でその廃墟に忍び込んだ。

震災の翌年だったからか、大学に入って初めての夏休みだったからか、僕はかなり浮かれていたと思う。

ちがうよな、浮かれていたのは、僕がいまそれを思い出したからだ。そうでなきゃ、そこにあった世界全てが理由になるだろうけれど、それを言っちゃおしまいだ。

廃墟はその翌年取り壊され、僕は一度その取り壊されている途中で柵の外から眺めた以外は、もう二度とそこに立ち寄らなかった。